ナミビアの代表的な新聞である”the namibian”に大変気になる記事が掲載されたので紹介しす。”Japan aid at risk”[日本からの援助が危機に]というタイトルで、内容は2007年にナミビア大統領が来日され当時の福田首相と会談したときに決まったとされるウォルビス港(Walvis Bay)コンテナターミナル整備計画にまつわる不正疑惑です。以下、記事の内容。
日本はこの事業の予備調査のために200万米ドル(USD1=JPY80として1.6億円)を投じ18の企業がこの予備調査の仕事を取るべくpre-qualification((入札参加資格審査とでも訳します)というに参加しました。もちろん、この事業のためにODA有償円借款も投じられます。入札参加資格審査を行ったのはナミビア(国営企業のNamPort)側です。ここで異常事態発生です。企業数18のうち参加資格を得た(short-listed)のはCHEC[China Harbour Engineering Company]たった一社。それを知った南アフリカ大使館はどういうプロセスでこの決定がなされたのかナミビア首相へ事実確認のため面会を要求。しかしナミビア政府側からは首相不在とのことで現在まで返答なし。The namibian の記者がNamPort側の責任者に取材をしてもこの件に関し誰と交渉をしたのかこれまた返答なし。日本側は、ナミビア政府側に説明を求めております。きちんとした説明がないのならODA有償円借款の件は中止となることを考えている。The namibian ではこの件をナミビアのある汚職事件に絡めています。この汚職事件はナミビア政府高官がレントゲン機器納入に関し中国の企業から賄賂をもらって便宜を図ったとされる事件です。記事は「ナミビアは日本側の援助を昔からの友人である中国に渡した」疑いがある、と締めくくっています。
ここから以下は私見です。JICAや日本政府の見解を示すものではありません。また私はこの件に関しJICA、またはJICA関係の職員からお話を伺ったわけでもありません。
ナミビアはアフリカの優等生ともいわれるくらい政治的には安定した国です。しかし独立してから21年しか経っていません。この独立には中国・キューバが大きく関与しております。ここらへんの歴史についてはWiki等をみていただくと面白いと思います。特に中国は独立闘争(戦争)の際、現政権であるSWAPOに大量の武器を供給しております。概して言えばアフリカの国々の独立の影に中国あり、と言っても過言ではないでしょう。独立の影の律役者としての中国。独立後は一般社会に中国企業(大企業から個人経営企業まで)が入り込み その影響力を経済面で遺憾なく発揮しています。アジア人=中国人というイメージが一般社会に浸透しております。彼らは粗悪な製品(そしてコピー商品)を一般人が手に届く価格設定で提供しています。
ここナミビアでも状況は同じです。第二次産業の製造拠点といえるものがない。中国製品の他は、南アフリカかザンビアからの輸入品が多いです。しかしこれらは価格が高め。粗悪といえども手に届く価格設定である中国製品を買わざるを得ない状況なのです。中国企業大儲けで一人勝ちです。ナミビア人は独立を手助けした中国に感謝している一方、経済面を牛耳られていることに良い心象を持っておりません。相反した感情を持っていると分析しております。
大型の建設現場に建てられている看板も中国企業の名前が入っています。ここに問題点があるのです。大型公共工事の殆どに中国企業。そこにも記事にもあった「黒い疑惑」がつきまとっているのです。経済面で優位にたった中国企業は献金等で政治家を操っているのではないか?と。民-民の付き合いならそれはそれで仕方ないことだとは思います。日本にも接待なんてものもありますし。しかしこれが公共工事だとそうは行かない。さらにこの件は日本の税金が使われているのです。このままだと日本はナミビアという国を経由して中国にお金をあげてしまったことになります。
コンテナターミナルというモノは残りますがそれがどのくらいナミビアのためになるのか?ナミビアに技術は残らない。技術を残すにはどうしたらいいのか?ハードだけでなくハードを作る過程におけるソフト面(技術、ノウハウ、マネジメント)を強化するのが今のナミビアには必要だと思うのです。
今回の件はコンテナターミナル整備の事前調査としてコンサル一社が最終候補名簿に載ってしまったということですが、一般的にいえばコンサル会社の後ろには懇意にしている建設会社がいます。中国系コンサルがこの仕事を取るということになれば、事前調査が済みいざ整備工事が始まる際には中国資本の建設会社が工事を落札するでしょう。
こういう状況であればまだ、「紐付きODA」の方がまだましだと思うのです。完全に紐付きだと中国資本か日本資本に変わっただけでナミビアのためにはなりませんが、例えば日本の企業とナミビア資本の企業がJV(JOINT VENTURE)をつくって技術移転を含めて事業を展開するのはどうだろうか。技術移転には時間と手間がかかり、日本の企業がそれに応じるられるかどうか疑問は残るところです。しかしCSRが一般化した今、企業が立地する狭い範囲への社会貢献だけでなく広い視野での社会貢献も検討される余地があるのではないかと考えます。ナミビア側では数社が集まりその中から技術者を数名選定しJVに参加する。ナミビア人技術者が所属する会社(組織)に学んだ技術を水平展開できればすばらしい効果を発揮するかと思います。
理想論ですかねぇ・・・。
日本の企業もCSRを掲げるなら、日本国内だけに目を向けるのではなく世界にも目を向けてほしいです。発展著しいBRICs諸国もいいですが、競争多寡になるのは用意に予想できることです。次の市場はアフリカであると私は見ています。現地に工場を作り、現地の人を教育・採用し、現地で消費してもらう。製品価格が高く現地の購買力では無理ならば欧州諸国に輸出。日本企業の教育担当者が少しでも楽になるようにJOCVが初等教育から高等教育の機関に入り込んでいる・・・そう考えていただくのは無理な相談なのでしょうか。
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